100%グループ会社間での取引で注意すべきこと(強制適用)
オーナー社長が複数の会社を全て所有している場合や、持ち株会社などがグループ会社を完全支配している場合には、
グループ法人税制というものが強制的に適用されます。
グループ間でこれから紹介する取引があったときには、通常の単独法人が行う税務処理とは異なりますのでご注意下さい。
※分かりやすさを重視して、実務に絞って簡潔にお伝えします。実際の適用には顧問の税理士に聞くなどのご対応をお願いします。
<グループ法人税制の考え方 連結納税制度との違い>
グループ法人税制では、納税の主体は個々の法人です。グループ内での所得の通算をすることはありません。
一方で、連結納税制度と同じ点は、グループ内の取引について、グループの外に出るときまで損益を繰り延べていきます。
実務上は、グループ内での取引が検討されるときに、グループ法人課税の対象になるかを確認していく流れになるでしょう。
<グループ法人課税の対象となる取引>
①資産の譲渡取引等
②受取配当金等
③寄付金・受贈益
④株式発行法人への譲渡等
⑤残余財産が確定した場合の繰越欠損金額の引継ぎ
⑥中小企業向けの特例措置の適用
⑦現物分配
⑧株式の評価損
ここでは、中小企業によくある取引として、①資産の譲渡取引等と③寄付金・受贈益の適用をご紹介します。
<①資産の譲渡取引等>
通常、資産の譲渡があった場合には、その帳簿価格と売却価格との差額を譲渡益(譲渡損)として益金(損金)に計上します。
100%グループ内での法人間の取引では、譲渡した資産がグループ外に出るまでは益金(損金)として計上しません。
ただし、グループ法人課税では、土地以外の棚卸資産や帳簿価額1,000万円未満の資産等は対象外です。
※また、資産がグループ内のA社→B社、B社→C社のように移転した場合には、C社に移転したときにA社では譲渡益(譲渡損)を計上します。
代わりにB社で譲渡損益を計上しないことになり、グループ外に出るまでは損益を繰り延べることには変わりません。
<③寄付金・受贈益>
グループ内で無利息の金銭の貸し付けをすることや、通常よりも低い金額で資産を譲渡することがあります。
これらの取引で「寄付金」に該当する部分は、グループ法人課税では、その全額が損金不算入になります。
反対に受け取った法人は、受贈益が計上されますが、益金不算入となります。
つまりは、このグループ内取引では税金計算上、損得無しとして処理されます。
ここで注意すべきこととして、
寄付金・受贈益でのグループ法人課税が適用されるのは、完全支配している者が法人に限ります。
オーナー社長が個人で完全支配している場合には適用されません。
<まとめ>
今後の流れとして、M&Aなどの組織再編はますます活発になっていくものと思われます。
文頭でお伝えしたようにグループ法人課税は強制適用です。
後から気が付いて利益が大きくズレることもありますので、ご注意ください。