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「赤字の副業を作って節税しよう!」の3つの勘違い

最近ネット記事で「赤字の副業を作って確定申告すれば、納める税金が安くなるからお得ですよ。私は20年以上この方法で申告し、無税でいます。税務署からも一度も否認されていませんからお勧めです」というものを見ました。

 

詳細は書かれていませんでしたが概要としては以下となります。

  • 給与所得がある
  • 自宅で開業して、自宅の家賃や光熱費の一部を事業の経費とする
  • 身の回りの支払いも事業経費にする
  • 個人事業は赤字になるため、事業所得と給与所得を相殺して所得税は発生しない
  • 税務調査に一度も入られたことが無いため、超優秀な節税策になる

さて、この中で大きく3つの勘違いがありますがお気づきでしょうか。

 

目次

 勘違い1 確定申告書を受理された=承認 ではない

よくある勘違いとして、毎年確定申告をしていて税務署にはきちんと提出しているから認められていると思われる方が多くいらっしゃいます。

 

これはきな間違いです。
税務署などの確定申告会場で確定申告書を提出された方はご存じだと思いますが、その時に順番に担当者が受付し受付印を押してくれますが、確定申告書の内容は全く見ていません

 

見ているのは氏名や押印の漏れや最低限必要な資料の不足だけです。
コロナでは状況が違うでしょうが、通常確定申告の期限が迫ってくると税務署等に確定申告の提出のために多くの方が来場します。
その一人一人の申告内容を見ることは不可能なため、簡単な受付しかできないのは当然と言えば当然です。

 

それでは何をもって承認されたと判断するかというと、「税務調査で否認されなければ承認(是認)された」とするのも少し違います。

税務調査をするのも人間ですので全てを見ることは出来ませんし、調査担当者の判断も少し異なることがあります。
たまたま今回は指摘されなかっただけで、実は認められないものだったということがあるのです。

 

私が聞いた事例でも、『ある年の税務調査では売上計上に大きな勘違いがあり数千万円の追徴課税があった。その3年後にあった税務調査では、売上計上は問題なかったが、毎年続いている交際費について新たに指摘された。』というものがありました。

今回の事例で言うと、給与所得や事業所得の赤字が小さく、たまたま税務調査の対象にならなかったということが十分に考えられます。
安易に鵜呑みにすると誤った結果を招きますのでご注意下さい。

 

 勘違い2 事業所得とは言えない

所得税の計算では、その所得の種類によって税額の計算が異なります。

今回のケースのように、事業所得ではざっくりどのように計算されるかというと、
事業の収入ー事業の経費=事業の利益となり、この利益(所得)に応じて所得税が掛かります。

そして、事業所得が赤字になった場合に、給与所得と相殺することが出来ます
難しいことはさておき、この相殺できるという特徴を知っていることが重要です。

 

ここでの勘違いは、何か収入があれば事業所得に出来るという安易な判断です。

事業所得にするためには、その名の通り事業を行う必要があります。
事業であるという判断基準は明確なものはありませんが、営利性があるのか、継続的に行われているか、どれだけの労力を掛けているのか、などがあります。

つまり、少しだけ転売をして売り上げを作り、その他売上に関係のないもろもろの経費を多額に計上して赤字を作ろうとするのには無理があるということです。

たまに「開業届けさえ出せば事業開始の証明になる」という文言を見つけますが、当然あとから否認されることがありますのでご注意ください。

そして、事業所得にならず雑所得のように別の所得になった場合には、給与所得との相殺(損益通算)は出来ませんので、この節税スキームは使えないことになるのです。

 

 勘違い3 自宅開業ならもろもろ経費に出来る訳ではない

事務所を借りずに自宅で副業をされている方が増えてきています。

確かに、自宅を事務所代わりに使用することで、家賃や光熱費、通信費の一部をその事業の経費にすることはできます。
ただ、この情報だけが先走り、自宅開業なら思ったように色々経費出来ると考えてしまうのは誤りです。

例えば、法人と個人は明確に分かれているため、法人の経費は明確に算出しやすいです。
そのため経理になるものかそうでないかは100か0かで判断されるのが一般的です。

 

対して個人事業の場合は、事業でも私用でも使っている経費があるため、その線引きが難しいです。
一定の根拠ある資料を基に事業割合(どれくらいを経費に出来るか)を計算することになるのですが、その根拠が明示されているわけではありません。

ここでの勘違いは、「根拠がない=自由に経費にして良い」としてしまうことです。

この判断は会計事務所の実務でも悩むところで、そのケースごと客観的で説得力のある経費割合の根拠を探しているところなのです。

 

 まとめ

今回は個人事業の節税策として紹介されているもので、よくある勘違いを3つご紹介しました。

少し話はそれますが、「投資不動産を購入して赤字を作ろう。高所得者のあなたら○○円税金が返ってきます」といううたい文句に誘われてサラリーマンが投資物件を購入する事例をよく聞きます。

それ自体は嘘を言っているわけではありませんが、そもそも赤字になることを前提に投資不動産を買うのはおかしく思いませんか。

なぜ赤字になるものを買わないといけないかを考えてください。
かつてこの手法で価値の無い不動産を高額で買わされた方が多くいて、購入価格より大幅に値下げして泣く泣く売却したということがニュースにも取り上げられていました。

節税ばかりに注意がいくと大事なことを見落とすことになります。
将来を見据えてお金を残せるように考えていきましょう!

 

 

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