得意先が倒産したときの対応 会計・税務編
事業を続けていると、得意先の倒産や夜逃げなどで売掛金や貸付金の回収が見込めない状況になることがあります。
誤解している方が多いのですが、税務上は一定のルールがあり、得意先が倒産したからといって自由に貸倒損失として損金にすることはできません。
そこで実務編に続いて、会計や税務での対応をご紹介していきます。
↓実務編を読んでいない方はこちらよりご覧ください。
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目次
得意先が倒産や破産した場合
ここで言うのは、倒産や破産だけでなく会社更生法や民事再生法で、金銭債権が切り捨てられたときの話になりますが、この場合は切り捨てられた全額をその時に貸倒処理します。
簡単に言うと、法律や債権者集会などの正規の手続きを踏んで決まった貸し倒れについては、有無を言わさずその時切り捨て処理となる。ということです。
勘違いしやすいところとしては、決定したときに切り捨て金額の全てを損金にするということです。
つまりは、そこに事業主の判断が加わることがありません。いわば強制的な貸倒損失の計上となります。(その時計上しない場合は、将来貸倒損失を計上しても税務上否認されてしまいます)
例えば、100万円の債権のうち、当期に90万円が切り捨てられることが決まれば、当期に90万円を貸倒損失として計上しなければいけません。翌期に計上することや一部を貸倒処理することもできないということです。
破産や民事再生など申し立て時の処理
上記の通り、破産や民事再生などの申し立ての段階では全額を貸倒処理することができませんが、個別債権の取り扱いとして、担保を差し引いた50%を貸倒引当金として損金処理することが出来ます。
得意先が夜逃げなどで金銭を返せる状況にない場合
上記に紹介した例と異なり、法的な手続きなどなく夜逃げや音信不通、相手に全く財産がない場合などで売掛金や貸付金の回収が見込めないこともよくあります。
この場合の対応としては、相手の資産の状況を知れるかどうかが最初の判断基準になります。
相手の状況を知れる場合
夜逃げでは知るすべはありませんが、債務者の資産の状況や支払い能力からみて、金銭債権の全額を回収できないと分かれば、その時に全額を貸倒損失として損金処理することになります。
最初の例と違うのは、強制的に時期が決められているのではなく、「全額」回収不能と「明らかになったとき」に貸倒処理するところです。
明らかになるのはすぐかも知れませんし、何年か後になるかもしれません。
また、回収不能という判断に恣意性が入る余地があるため、一部ではなく全額回収不能という条件を課していると思われます。
相手の状況を知れない場合
貸倒の処理が面倒になるのは、夜逃げなど相手の資産状況がつかめず、金銭債権を回収できるのか判断がつかない時です。
この時にはいきなり貸倒処理することはできません。
最後に取引をした日(もしくは最後に弁済を受けた日のいずれか遅い日)から、1年以上経過したときに、備忘価額1円を残して残額を貸倒処理することができます。
また、同一地域の債務者に対する債権で、債権回収の取立費用が債権額を上回っている状況であれば、同様に備忘価額の1円を残して貸倒処理することが出来ます。
気を付けて頂きたいこととして、以上の措置は売掛債権には適用できますが、貸付金には適用できないものになります。
担保について
これらの場合の貸し倒れ損失は、金銭債権に担保があればそれを控除した金額について貸倒処理していきます。
そして、1年以上取引や入金が無いことを根拠にする貸倒処理は、担保があると貸倒処理することはできません。十分にご注意ください。
連帯保証人がいる場合
連帯保証人は債務者本人と同等の責任を負いますので、貸倒の判断についても、債務者だけでなく連帯保証人についても同様に、財産状況や支払い能力を判断して適用することになります。
つまりは、債務者本人が支払えなくても、連帯保証人が支払えるようであれば貸倒処理することはできません。
まとめ
実務編で紹介したように、回収不能になりそうな債権があれば先に対応することが望ましいですが、何年も事業を続けていれば、債権回収ができない事態は避けては通れないものでもあります。
間違った処理をしてしまうと、経費が否認されるという更なる被害を受けることになりますので、顧問の税理士等に確認するなどして対応するようにしてください。