得意先が倒産したときの対応 実務編
事業を続けていくと得意先の倒産や夜逃げなどの理由で、販売した代金(売掛金)が回収できないことが起きてきます。
その時に、実務で行うことと税務上で出来ることは異なってきます。
それらの対応を紹介しますので、今後同様なことが起きた場合の参考にしてください。
目次
得意先が倒産(破産)したら 実務編
倒産した会社(事業者)は、破産管財人(通常弁護士)を立てて、裁判所を通して債権者に対して債権届出書を出します。
債権届出書は、簡単に言うと「破産した者にいくら売掛金や貸付金がありますか」というお尋ねです。
これを集計して、残った財産を分配していくことになります。
例えば、残った財産が1000万円で、あなたは1億円の売掛金を持っていたとします。
他の人もその破産者に9億円の売掛金があれば、あなたの取り分は10%(1億円÷10億円)ですので、受け取れる債権は100万円(1,000万円×10%)となります。
実際には破産者には財産が残っていないことが多く、ほとんど回収できないことがよくあります。
また、夜逃げや急に連絡がつかなくなることも多いです。
得意先が倒産する前の対応
破産手続きや民事再生法の手続きが開始されると、個別の債権回収は出来なくなります。
そのため得意先の倒産の手続き前に行動を開始できると対応が大きく変わります。
- 契約書の見直し・・・支払いが滞った時に債権を一括回収できるか
- 担保の追加・・・・・物の担保もありますが保証人をつける方法でも検討する
- 現金販売への変更・・ツケ(売掛金)での販売を止めて現金での取引にする
- 販売品の回収・・・・まだ在庫としてもっていればそれを回収する
上記のほかに、法的手段に訴える方法(仮差押えなど)もあります。相手の状況をみて弁護士に相談するのが良いでしょうか。
分配が少ない理由
破産した会社から回収できる債権が少ない理由として、残った財産の分配の優先順位があります。
以下、優先順位を簡単に紹介します。
- 1.破産管財人への報酬
- 2.破産手続きのための裁判費用
- 3.優先債権(税金や社会保険料、給料など)
- 4.一般債権(売掛金や貸付金)
つまり、あなたが回収できる金額は、滞納税金や未払いの給料などを差し引いた後に残った財産から支払われます。破産者に多くの財産が残っていることが稀であるため、ほとんど回収できないのです。
債権の時効
民法改正に伴い令和2年4月1日より、債権の消滅時効についても変更されました。
つまり、令和2年4月1日より前の債権と、それ以降の債権では時効の取り扱いが変わります。
商行為によって生じた債権でいうと、改正前は時効期間が5年と定められていましたが、改正後は「債権者が権利を行使をすることが出来ることを知った時から5年間、権利を行使をすることが出来る時から10年間」となりました。
何が変わったかというと、時効が伸びたと解釈することが出来ます。
ただ、上記条件のいずれか短い期間が時効の期間となるため、例えば権利行使が出来る時から9年経ってからそのことを知った場合、あと1年で時効成立となります。
※取引内容や相手先によって時効が変わりますのでご注意ください
まとめ
取引先の倒産で出来ることは、破産の手続きが始まる前までのことがほとんどです。
得意先からの売掛金の回収が少しずつ滞るようになってきた、分割払いになってきたなど、その予兆を見逃さないように注意しましょう。
以下、会計処理や税務の注意点をまとめています。合わせてご覧ください。