外食産業とコロナ
新型コロナウイルスで経済が低迷していますが、特に外食業や宿泊、観光業に被害が直撃していると言われています。
会計事務所に勤めている者として、外食業の厳しさは日々実感することです。
一旦収まりかけたコロナも再び猛威を振るい始めてしまいましたので、まだまだ厳しさが続きそうな気配です。
目次
<統計上で見た飲食業の苦しさ>
上場している企業の統計から外食業の今を見てみましょう。
コロナが広まっている間でも業績を維持しているのは、マクドナルドやモスバーガーです。
客数は前年同月比80%~90%となっていますが、客単価が120%程度となり、売上高が前年同月比で上回る状況が続いてきました。
※マクドナルドの6月の売上高が前年を下回ってしまったのは気になるところですが。
一方で、その他は軒並み前年比を下回っており、すかいらーくやサイゼリヤは、3月の前年比40%台の売上高からなんとか盛り返していますが、6月時点で依然70%弱と苦しい状況が続いています。
どの企業も客単価が比較的低く親しみやすいお店ですが、差は大きいですね。
これは主に持ち帰り需要への対応の違いと言われています。
思い返してみると、職場の近所のマクドナルドでは仕事帰りの時間には店外まで行列が出来ていました。マクドナルドやモスバーガーでは、自分の分だけでなく家族の分も買って帰る人も多いでしょうから、客単価が伸びるのもうなずけるところです。
外出自粛が言われ、営業時間の短縮が余儀なくされる状況下では、店内飲食がメインのところは厳しい売上が続いています。
※外食大手の売上高はフードビジネス総合研究所調べ
<宿泊・飲食業はレッドオーシャン>
外食業は入れ替わりが激しい業界と言われています。
新しくお店が出来たと思ったら1~2年後にまた新しいお店に変わっている、ということを目にしている方も多いのではないでしょうか。
脱サラで開業する方、大手チェーンの業態変更など状況は様々ですが、競争が激しい業界であるのは間違いありません。
少し前の数字になりますが、厚生労働省が発表している2015年の統計によると、全産業の開業率が5.2%、廃業率が3.8%なのに対して、宿泊・飲食サービス業の開業率が9.7%、廃業率が6.4%となっています。
これは全産業の中でもトップの数字です。
もともと競争が厳しい状況であるのに、コロナによる影響が直撃されるのですから、現在の状況が猶予ならない事態であることは明らかです。
<中小企業の飲食サービス業の現状と対策>
会計事務所でクライアントになる飲食業の方々は、一人で切り盛りされている方、家族経営の方から数十件の店舗を運営される方まで様々です。
皆さんそれぞれ自分のお店に合わせた対策を講じています。
例えば、ランチを行っているところは、店内ではなく持ち帰りをメインに変える。
ブッフェ形式だったお店を個人別の皿盛りに変える。などです。
ただ、総じて厳しいのが現状でしょう。
ソーシャルディスタンスを保つため、客席を減らすということは、客数の伸びは期待できません。また、長居をせずに早々に帰路につくお客様が増えたと聞きます。飲食業ではお客様に長く滞在してもらい、アルコール類を多く頼んでもらって売上や利益を確保しているところも多いですので、客単価の上昇も期待できないところです。
こういう状況になって改めて普段からの経営戦略が問われているような気がします。
クライアントの方から「常連客に助けられている」、「お店のブランド価値を保ってお客様を維持している」ということを聞きます。
今、会計事務所として出来ることは、損益状況を伝えることではなく、キャッシュがどれだけ持つのかを伝えることと実感しています。
持続化給付金、家賃支援給付金など給付金や助成金などの収入で、なんとか危機的な状況を乗り切ろうとしている飲食店にとって、いま何ヶ月の運転資金が確保されているのか、どれだけ売り上げがあれば生き残っていけるのかは切実な問題です。
コロナ対策による融資制度、税金等の猶予制度もありますので、顧問先の会計事務所等がございましたら相談することをお勧めします。
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